Weingut Dr.Schneider (ZunZingen)
ゲーテインスティテュートの企画で、バーデンのワインを6種類試飲してきた。Weingut Dr.Schneiderはフライブルクとバーゼルの間くらいにある。試飲したのは白と赤を3種類ずつ。それぞれGutedel(シャスラ)、Weissburgunder、Graurburgunder、Spaetburgunder(und Barrique)、Cabernet Sauvignon & Merlotの計6種類。
Gutedelは青リンゴやレモングラスの香りが特徴的で、余韻に苦みが残る。Weissburgunderは青リンゴに加えてヘーゼルナッツの香りがする(ツナ缶っぽいとも思った)。より酸が強くて辛口に感じる。Graurburgunderはバナナやクリームの香りがして、味にも厚みが感じられる。ステンレスタンクでの醸造。
Spaetburgunderは2013年がステンレスタンクで、2012年がバリックのもの。前者から赤いベリー系の香りがよく感じられた。ピノの特徴がよく出ている。後者からはコンポートしたベリーやバニラの香り。味もまろやかで果実味を豊かに感じる。Cabernet & Merlotはボルドーほどタンニンが強くないぶん、親しみやすい。好む人も多かった。カシスやブラックベリーに加えて、バニラや樽の香り。これらの赤ワインはすべてアルコール度数13%だが、同じようには感じなかった。
いくつか質問をした。まずGraurburgunderとRulaenderとの違いについて。日本語の記事で読んだ通り、Graurburgunderの方がより辛口に仕上がっているそうだ。おそらく国際的な評価を意識してのことだろうと思われる。それにRulaenderと名のついたものはあまり熟成に適さないのだろう。次にGraurburgunderに樽を使っているかについて。クリーミーな香りがしたから、もしかしてと思って訊ねたところ、そうではなかった。そういえば、ピノグリに特徴的な乾いた土っぽい香りは感じなかった。そして、なぜコルクを使わないかについて。Dr. Schneiderのワインは、スクリューキャップか専用のプラスチック栓だった。これはやはりコルクによる影響を避けたいためだそうだ。できればGutedelとシャスラの味の違いについても訊きたかったが、ドイツ語での言い方が分からずに訊ねじまいとなった。
最後に、試飲に使われたWeingutオリジナルのグラスに描かれた絵について。角が生えたような蛙はここのシンボルのようだ。なかなかいい感じだったので試飲グラスを購入した。そしたらおまけに、試飲で使ったCabernet & Merlotをくれた!ありがたい。
ドイツ語それ自体は分からずとも、自分が知っている内容なら理解できる。芸が身を助けるなら、ワインは懐を助ける。ドイツ語のワイン本を買ったので、これでワイン用語のドイツ語版を覚えて生産者に会いに行きたい。
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Weingut Dr.Schneider (ZunZingen)
ゲーテインスティテュートの企画で、バーデンのワインを6種類試飲してきた。Weingut Dr.Schneiderはフライブルクとバーゼルの間くらいにある。試飲したのは白と赤を3種類ずつ。それぞれGutedel(シャスラ)、Weissburgunder、Graurburgunder、Spaetburgunder(und Barrique)、Cabernet Sauvignon & Merlotの計6種類。
Gutedelは青リンゴやレモングラスの香りが特徴的で、余韻に苦みが残る。Weissburgunderは青リンゴに加えてヘーゼルナッツの香りがする(ツナ缶っぽいとも思った)。より酸が強くて辛口に感じる。Graurburgunderはバナナやクリームの香りがして、味にも厚みが感じられる。ステンレスタンクでの醸造。
Spaetburgunderは2013年がステンレスタンクで、2012年がバリックのもの。前者から赤いベリー系の香りがよく感じられた。ピノの特徴がよく出ている。後者からはコンポートしたベリーやバニラの香り。味もまろやかで果実味を豊かに感じる。Cabernet & Merlotはボルドーほどタンニンが強くないぶん、親しみやすい。好む人も多かった。カシスやブラックベリーに加えて、バニラや樽の香り。これらの赤ワインはすべてアルコール度数13%だが、同じようには感じなかった。
いくつか質問をした。まずGraurburgunderとRulaenderとの違いについて。日本語の記事で読んだ通り、Graurburgunderの方がより辛口に仕上がっているそうだ。おそらく国際的な評価を意識してのことだろうと思われる。それにRulaenderと名のついたものはあまり熟成に適さないのだろう。次にGraurburgunderに樽を使っているかについて。クリーミーな香りがしたから、もしかしてと思って訊ねたところ、そうではなかった。そういえば、ピノグリに特徴的な乾いた土っぽい香りは感じなかった。そして、なぜコルクを使わないかについて。Dr. Schneiderのワインは、スクリューキャップか専用のプラスチック栓だった。これはやはりコルクによる影響を避けたいためだそうだ。できればGutedelとシャスラの味の違いについても訊きたかったが、ドイツ語での言い方が分からずに訊ねじまいとなった。
最後に、試飲に使われたWeingutオリジナルのグラスに描かれた絵について。角が生えたような蛙はここのシンボルのようだ。なかなかいい感じだったので試飲グラスを購入した。そしたらおまけに、試飲で使ったCabernet & Merlotをくれた!ありがたい。
ドイツ語それ自体は分からずとも、自分が知っている内容なら理解できる。芸が身を助けるなら、ワインは懐を助ける。ドイツ語のワイン本を買ったので、これでワイン用語のドイツ語版を覚えて生産者に会いに行きたい。
「いつからシン・ゴジラの話と錯覚していた…?」
結論から言うと、もっかい観たい。
帰省して数日が経ち、持ってきていた本を読んでしまって手持ち無沙汰な昼過ぎ、映画を観に行ってきた。
ツイッターでちらほら面白い話が流れてくる「シン・ゴジラ」を。
俺がよく覚えているのは「ゴジラ対デストロイヤー」で、繰り返し見た。とはいえ、ゴジラにそう思い出が多いわけではない。
今回の動機としては時間あるし、いっちょ行ってくるか、本屋にも寄りたいからといったくらい。
シン・ゴジラ、面白かった。夏に映画館で観るのにピッタリ。手に汗握りながら観た。
感想として二つ。
観客は全体を見られるからまだ余裕があるけれど、実際の場面に居合わせたら自分は何をするだろうと考えた。
役割をこなす・責任を果たす・可能性を信じることに、自分は惹きつけられると改めて感じた。
自分が大学院生ということもあって、専門性の発揮と相乗効果に見入る。
この映画には、日本で暮らしていると感じる「あるある」ネタが随所に散りばめられていて、思わずニヤリとしたりクスリとしたりする。
ただ、よくよく考えると、それが「笑えない冗談」でもあることがすこし恐ろしい。
二度三度と観ることで、分かってくることもあるようだし、なによりまた観たいと素直に思ったから、また行こう。
「投票に行かない勇気」
「バラマキさん」
「九時五時、僕の名前を福祉政策批判の文脈でよく用いられる言葉みたいに呼ぶんじゃない。僕の名前は阿良々木だ」
「そちらこそ、私の名前を現実にはそうそうありえない勤務時間みたいな名前で呼ばないください。私の名前は八九時です。一時間勤務です!」
「それ、勤務時間というより通勤時間だな。それで何の用だ、八九寺?」
「いよいよ参院選の投票日ですね。今年から18歳以上なら投票できるようになったので阿良々木さんも晴れて一票をもつに至ったわけです」
「ああ、選挙か。ぼく、ちょっとそういう政治がらみの話って苦手なんだよなあ」
「おやおや。まわりに羽川さんや戦場ヶ原さんがいらっしゃるんですから、教えを乞えばいいじゃないですか」
「いや、ぼくの場合そういうんじゃなくて、なんて言うか、若い人も選挙に行こう!ただし、ある政党には投票しないものとする、みたいな雰囲気が苦手でね」
「ははあ、好きに書いてくださいと言われているのに、正解がある感じと似ていますね」
「そう。だから投票するのもしないのも気が重くて」
「阿良々木さん、勇気と最後につければたいていの言葉はポジティブに置換できますよ」
「そんな馬鹿な。日本語はそんな単純な構造にはなっていないはずだ」
「やってみますか」
「…やってみろ!」
「ではまずは小手調べから」
「白票を投じる勇気」
「やるなあ。やっていることは普通に無効票を投じただけなのに、うしろに勇気とつけるだけでまるでそれが正しい行為であるかのようだ。そんなことは一言もいっていないのに」
選挙での「白票」を「社会を変える力がある」とミスリードする謎の集団「日本未来ネットワーク」のサイトが突如出現 | BUZZAP!(バザップ!)
公職選挙法 第六十八条(一部抜粋、強調筆者)
衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙の投票については、次の各号のいずれかに該当するものは、無効とする。
七 公職の候補者の氏名を自書しないもの
2 衆議院(比例代表選出)議員の選挙の投票については、次の各号のいずれかに該当するものは、無効とする。
七 衆議院名簿届出政党等の第八十六条の二第一項の規定による届出に係る名称又は略称を自書しないもの
3 参議院(比例代表選出)議員の選挙の投票については、次の各号のいずれかに該当するものは、無効とする。
九 公職の候補者たる参議院名簿登載者の氏名又は参議院名簿届出政党等の第八十六条の三第一項の規定による届出に係る名称若しくは略称を自書しないもの
「支持政党なしに投票する勇気」
「なんと!すげえ。結果として騙されているだけなのに、まるでそうすることによって民主主義を守ったかのような印象がある。そんなことは、一言も言っていないのに!」
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「投票に行かない勇気」
「な、なんてことだ!もはやあとがない。なにもしてなく、無駄に権利を放棄しているだけのはずなのに、あえてその選択に身を賭し、大義のために民主主義を憂えているかのようだ。そんなことは一言も、本当に一言も言っていないのに!だけど、いま僕は権利を行使しないわけには…」
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「権利を行使しない勇気」
「権利を行使しない!」
「言葉のかっこよさに引きずられて、つい権利を行使しないでしまった!実際は権利を行使していないだけなのに。日本語って簡単だなァ…!」
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この記事の元ネタはアニメ「偽物語」第一話Bパートにおける主人公・阿良々木暦と八九寺真宵との掛け合い(勇気と~の部分)。アニメの原作は西尾維新による同名の著作。
ところで60歳代の日本人人口およそ1,800万人に対して30歳代はおよそ1,750万人と大差がない。しかも20歳代の人口(1,300万人)は70歳代(1,270万人)よりも多い。
出典:−人口統計資料集(2015)−
若い人がどこに投票するかはさておき、もし高齢者並みの投票率となればこれまでとは違った政治風景が見られるかもしれない。
参院選は今日7月10日20時まで投票できる(一部地域を除く)。
君たちは白いキャンバスではない。
ドッカー・ノ・エライー学長が入学式で読んだ式辞が話題を呼んでいる。
ドーコニ・モナイ大学の入学式ではつい先月まで高校生だった若者たちが大勢座っていた。
そこに現れたエライー学長は、決まりきった挨拶のあと、こう切り出した。
「君たちは白いキャンバスではない」と。
白いキャンバス――この喩えは、よく無限の可能性を表すものとして用いられる。
曰く、君たちは白いキャンバスでそこには無限の可能性があるのだ云々…といった具合に。
エライー学長の念頭にはそれがあったのだろう。
それまで式辞に興味を示していなかった新入生も、その言葉にハッと顔をあげる者がちらほらといた。
「君たちは覚えているだろうか。初めてクレヨンを手にしたときのことを」
そう続けてエライー学長が話したのは、誰しもあったであろう幼いときのことだった。
「私は初めてクレヨンを手にしたとき、非常にわくわくした。私には描きたいものがたくさんあった。
ほかの友人には何を描いたらいいか戸惑っている者もいた。そういった者は先生に手ほどきをうけて上手になっていった」
私事で恐縮だが、私は後者のくちだった。ただクレヨンを持っては、手についたその色をぼんやりと眺めていた。
おそらく新入生も学長の話を聞きながら自分の小さいころを思い返していただろう。
「私はたくさんのものを描いた。だが、しばしば私が何を描いたか人に伝わらないことがあった。
実際のものを描いたのに想像上の生き物だと勘違いされたり、その逆だったりしたこともあった。
端的に言って私は悔しかった。どうして、みんな分かってくれないんだろうと。そういうときはクレヨンを手にしたくなかった」
今でこそ表現の世界で高い評価を受けているエライー学長にも、かつてそのような時期があったのだ。
遠いところにいると思われた人物の意外な過去に新入生も親近感を抱いたのか、最初のころよりも顔をあげて耳を傾けている人が多い。
「あるとき私は友達と大喧嘩した。私が猫だと思って描いているものを、その友達はどうしても犬だと言い張る。
最期には取っ組み合いにまでなった。そして最後にその友達が言い放ったことを、私は今でも鮮明に覚えている。
その友達はこう言ったのだ。お前の絵は分かりにくいんだと。私はあまりに衝撃を受けて固まってしまった」
当時のことを直接見たわけではないわれわれには、幼いエライーが実際に何を描いていたかは知る由もない。
ただ、学長の口ぶりからたしかにそのとき幼いエライーがよほど落胆していたことがよく伝わってきた。
過去を振り返るかのように間を置いて発せられた口調はしかし、存外に明るいものだった。
「友達に分かりにくいと叩きつけられた私はしばらく落ち込んだのち、すぅっと冷静になった。
私ははっきりと分かった。なぜ私の描いたものがその通りに人に伝わらないのかを。
あのときまで私にはそれが人からどう見えるかという視点がなかった。私に見えるように人にも見えていると信じていたのだ」
この言葉を耳にしたとき、私は思わずうなってしまった。
これでも文筆を生業にしている者として思い当たるところがないわけがなかった。
私は学長の話を聞くうちにどこかで自分の身と重ね合わせるように聞いていた。
新入生のうちにも顔に手を当てて宙を仰いでいる者がいた。きっと、似たようなことを経験したのだ。
「私は初めてクレヨンを手にした昂揚感そのままに描き散らしていったが、それは私だけのものであった。
絵に描いたものはほかの人の目にも触れて、その人なりに受け止められるということに気がつかなかった。
あれ以来、私の絵は変わった。なにより私自身が変わったのだ。きっかけを与えてくれたその友達には会えなくなった今も感謝している。
私は、君たちが白いキャンバスではないと言った。君たちにはあの日クレヨンを握った胸の高鳴りや戸惑いを思い出してもらいながら、
これから描こうとしているものを考えてみてほしい。そこに他の人はいるのか。独りよがりになってはいけない。
何を描いたらいいか分からなくなったり、何も描きたくなくなったりしたときには、自分にはないクレヨンを持っている人に会ってみるのもいい。
そうしてたくさんの彩りに富んだ大学生活を送ることができるよう祈念して、入学の挨拶とさせていただきたく」
エライー学長がそう言って式辞を終えると、自然発生的な拍手が会場に満ち満ちた。
なかには感極まって目もとを指でぬぐう新入生もいた。
思わず椅子から立ち上がって拍手をしていた私も、着席してからしばしの間はぼうっとしていた。
白いキャンバスなどではなく、一人ひとり異なった色のついた人生があるということを、エライー学長は描いてみせたのだ。
記者[ジューニン・トイーロ]
伊勢志摩で開催されているG7サミットで提供されたワイン
今回のサミットで提供されたワインはすべて日本のもの
内容は泡2本、白5本、赤4本、ロゼ1本。
それぞれの値段を見てみると、1000円台か5000円以上というラインナップで差が大きい。
北海道の洞爺湖で開かれたG8サミットでは海外のワインも提供されていた。
8年前と今とでは日本ワインそのものも、それを取り巻く状況も一変しているに違いない。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/toyako08/info/lunch.html
<ワイン>
朝日町ワイン 朝日町マイスターセレクション バレルセレクション赤
ヴィラデストワイナリー ヴィラデスト ヴィニュロンズリザーブ シャルドネ2014
木下インターナショナル シャトー酒折ワイナリー 甲州ドライ2015www.kinoshita-intl.co.jp
サッポロビール GP 絢あや(赤)
サッポロビール GP 泉せん(白)
シャトー・メルシャン アンサンブルももいろ2013www.chateaumercian.com
丸藤葡萄酒工業 ルバイヤート プティヴェルド2012www.rubaiyat.jp
マンズワイン スパークリングワイン甲州酵母の泡キューブクローズ
メルシャン シャトー・メルシャン 北信シャルドネ2014www.chateaumercian.com
メルシャン シャトー・メルシャン マリコ・ヴィンヤードオムニス2012www.chateaumercian.com
<出典>http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000159547.pdf
北信シャルドネは今年開かれた第40回国際ワインチャレンジで金賞を受賞している。
www.afpbb.com
来週の金曜からは東京・豊洲で第2回日本ワインMATSURI祭が開かれる。
今回のサミットで提供されたワイナリーも多く出店している。
これからもどんどん日本ワインの品質と地位は向上していくことだろう。
nihonwine.tokyo
海とヌードル
4月10日に、青春18きっぷを使って安房鴨川に行った。
きっぷが1日分余っていたこともあり、電車に揺られて、海を見た。
安房鴨川という名前は、村山由佳の『おいしいコーヒーのいれ方』シリーズで知った。
ただ安房鴨川に行ければそれでよかったため、駅に着いた途端に目的は果たされた。
駅のわりに新しいトイレが、どことなく不釣り合いだった。
とりあえず海を目指すことにした。
途中で自動販売機のスペースがあって、そこで売られているカップヌードルが魅力的だった。
お腹が空いていて、ラーメンの気分だったこともある。
海には人がまばらにいて、テントを砂浜に張ったりサーフィンをしたりしていた。
そこで突然、海を見ながらシーフードヌードルを食べる案がひらめいた。
こういうお約束事にめっぽう弱い。
電池の少ないスマホで周辺の飲食店を探すことはやめて、さっきの自販機スペースに戻った。
なかに入ると、自販機から放たれた熱が「むっ」と「もわっ」の間で感じられる。
出てきたシーフードヌードルにお湯を入れて海岸の方へ歩いていく。
てきとうなところに腰をかけて、ラーメンをすする。
海を見ながらシーフードヌードルを食べる、ということがしたいだけだった。
食べ終わるころには何とも言えない気持ちになっていた。
暗いわけではないにしても、空一面を雲が覆っているせいで景色が灰色がかっている。
まるで、蒸気で曇ったフライパンの蓋を、内側から見ているかのようだった。
水平線は空と海の合わせ目のように見えた。
その光景は、宇宙船の中に作られた人工の海の姿を思わせた。
ぴったりと閉じられていて、外へは出られない。
安房鴨川の外には出られないような錯覚が一瞬だけよぎった。
ここに住むことはできないと思ってしまった。
どうしてか落ち着かない気分にさせられた。
その街並みに、変われなさを感じ取ってしまった。
一日を経るごとに「新しくなりたい」と思う。
海を見て、晴れやかな気持ちになることも開放感を覚えることもなかった。
晴れた日の海なら、いつものようにあの向こう側へ行きたいと思っただろうか。
名物の海産物を食べることもせずに、駅の向こうにあるイオンの4階でコーヒーを飲んで安房鴨川を後にした。
今度来るときには、よく晴れた日を選んで、鴨川シーワールドにも足を伸ばし、店では新鮮な魚介に舌鼓を打ちたい。