ひとつの世界観が終わりを告げる

 ここ最近の世の中の動きを見ていて、ふと「ああ、ひとつの世界観が終わるを告げるんだな」と悟った。おおざっぱに言って、1945年以来この日本でほとんど誰しもが抱いていた世界観が、この先通じなくなっていく。「ひとの人生を犠牲にしても省みない」世界観が常識どころか異端になっていく。
 1945年以来と区切るのは、太平洋戦争後に生きてきた人たちを念頭に置いているからだ。日本の復興のために、あるいは自身や家族が生き残れるために、身を粉にして働いてきた人たち。そういった人たちに育てられた子どもたち。生きるために、ひとの人生を丸ごと犠牲にせざるをえなかった時代。
 ひとはおそらく、生きていくために他の命をいただくように、他のひとの人生を大なり小なり貰う必要がある。昔であれば一人の人生を40年か50年貰って、ようやっと自分も生きられた。多くの男は勤め人として、多くの女は母として、己の身を捧げ、人生を犠牲にしてきた。かつてなら、今の我慢が報われると信じられたし、周りには同じような人たちがいたから、独りではないと思えた。
 バブルが弾けてから、潮流が変わった。犠牲の対価を得がたくなり、徒労としか思えない場合が目につくようになった。いわゆるパイの拡大を期待できなくなった。太平洋戦争からちょうど半世紀近く経つころ、ある幸いと不幸が重なって生じた。幸いにも、先人たちの多大な犠牲の上に、少なくとも物質的に豊かと言える時代が来た。だが不幸にも、その時代から生きていく人たちには、わが身の犠牲に適う対価を期待できなくなった。
 生まれてきてからずっと、失われた20年あるいは30年と言われる状況下にある人たちと、それ以前を知っている人たちとの間には大きな溝がある。人生を犠牲にしてもきっと得られる対価があると思えるか否か。その対価は例えば正社員であるとか家族であっただろう。一度きりの人生を犠牲にしてまで得られるものがあまりに少ないか、そもそもありそうにないと考えた人たちは、人生を犠牲にしないで生きられる途を探し始めた。一人の人生を潰さずに、要所要所で他のひとから助けを借りたり、誰かに力を貸したりしながら生きられるように。
 そも、ひとの人生の大部分を貰わないと生きていくことが難しいというのは、ヒューマンリソースが生命線になるということだ。将来の働き手や世話係として子どもをたくさん産み育てるのはその一例だ。ヒューマンリソースに依存しない代替の仕組みができていくと、仕組みの管理に手間と時間を費やすようになると同時に、子どもを数多く生み育てなくてもよくなる。
 もう30年以上前から日本で起きているのは、生まれる人たちが減っているのに、未だにヒューマンリソースに大きく依存している事態。「ひとの人生を犠牲にしても省みない」世界観がずっと常識だったから、人生を犠牲にしないのは我が儘だとか非常識だと非難されてきた。「今の若者は甘えている」とはいつの時代もある繰り言のようだが、改善や改良を続ける限り後代は先代がしてきたことを必ずしもしなくて済むようになる。「甘えている」ように見えるのが実は自分たちのしてきた喜ばしい結果だということを、往々にして先代の人たちは気づくことができない。自分がしてきた苦労で見知った者を楽にできるならいいが、知らない者まで楽するのは業腹だという感情がそこにはある。
 ところがここにきて、自分がした苦労を他のひとにしてもらいたくないと、ヒューマンリソースに依存しない仕組みを作ろうとする人たちが目立つ活動をしている。その流れをIT技術が後押ししている。そういった技術的側面もあるが、「ひとの人生を犠牲にする」ことへの嫌悪感や疑問がますます噴出しているように見える。ブラック企業への非難にしても、セクシュアルハラスメントへの抗議にしても、ひとの人生を踏み台にするなという怒りがある。
 おそらくいまようやく、人生を全うするということが日本でも正面きって主張され、受容されるようになってきている。我が儘だとか非常識などと言われてきたことが、単に一個人の性格や選択の問題ではなくなっていく。連日のニュースを見ていると、どうしても世の中に心の底から失望し落胆し嘆息したくなってしまう。それでもこの世界で生きていくしかないが、何かが変わったという確信が私のなかに芽生えている。

Bar inter-esse

「第二に、『公的』という用語は、世界そのものを意味している。なぜなら、世界とは私たちすべての者に共通するものであり、私たちが私的に所有している場所とは異なるからである。……世界の中に共生するというのは、本質的には、ちょうど、テーブルがその周りに坐っている人びとの真中betweenに位置しているように、事物の世界がそれを共有している人びとの真中betweenにあるということを意味する。つまり、世界は、すべての介在者in betweenと同じように、人びとを結びつけると同時に人々を分離させている。」

ハンナ・アレント(清水速雄訳1958=1994)『人間の条件』筑摩書房、pp.78-79

「この物の世界というのは、物理的に人々の間にある。そして、この物の世界から、人びとの特定の客観的な世界的利害が生じてくるのである。この利害interestは、まったく文字通り、なにか『間にある』(inter-est)ものを形成する。つまり人びとの間にあって、人びとを関係づけ、人びとを結びつける何物かを形成する。ほとんどの活動と言論は、この介在者in betweenに係わっている。」

ハンナ・アレント(清水速雄訳1958=1994)『人間の条件』筑摩書房、p.296

「公的なものの概念が著すのは、第二に、世界それ自体である。世界とは、われわれに共通なものであり、そのようなものとして、われわれが私的に所有しているもの、つまりわれわれの私有財産と呼ばれる場所とは区別されるかぎりは、そうである。……世界のうちに共生するということは、本質的に、物の世界が、そこを共通の住かとしている人びとの間に横たわっている、ということを意味する。しかもそれはたとえば、机が、それを取り囲んで座っている人びとの間に立っている、というのと同じ意味である。どんな間Zwischenもそうであるように、世界は、それをそのつど共有している人びとを、結合させるとともに、分離させるのである。」

ハンナ・アーレント森一郎訳1960=2015)『活動的生』みすず書房、pp.66-67

「というのも、世界とは、人間がそのうちを動き、そのうちで客観的-世界的なそのつどの関心を追求する、間の空間Zwischenraumだからである。この場合の関心Interesseとは、語源から言って、inter-esseつまり間に横たわっており、人間を相互に結びつけると同時に相互に分かつ関係を作り出すもの、という意味である。ほとんどすべての行為と言論が関わりをもつこの間の空間は、あらゆる人間集団にとってそのつど異なっている。」

ハンナ・アーレント森一郎訳1994=2015)『活動的生』みすず書房、p.230

"Der Begriff des Oeffentlichen bezeichnet zweitens die Welt selbst, insofern sie das uns Gemeinsame ist und als solches sich von dem unterscheidet, was uns privat zu eigen ist, also dem Ort, den wir unser Privateigentum nennen. (...) In der Welt zusammenleben heisst wesentlich, dass eine Welt von Dingen zwischen denen liegt, deren gemeinsamer Wohnort sie ist, und zwar in dem gleichen Sinne, in dem etwa ein Tisch zwischen denen steht, die um ihn herum sitzen; wie jedes Zwischen verbindert und trennt die Welt diejenigen, denen sie jeweils gemaiensam ist."

Hannah Arendt, Vita Activa oder Vom taetigen Leben, Piper 3623, Taschenbuchsonderausgabe, Piper, Muenchen/ Zuerich, 2002, pp.65-66

"(...) welche die Welt angehen, also den Zwischenraum, in dem Menschen sich bewegen und ihren jeweiligen, objektiv-weltlichen Interessen nachgehen. Diese Interesse sind im urspruenglichen Wortsinne das, was >inter-est<, was dazwischen liegt und die Bezuege herstellt, die Menschen miteinander verbinden und zugliech voreinander scheiden. Fast alles Handeln und Reden betrifft diesen Zwischenraum, der ein jeweils anderer fuer jede Menschengruppe ist, (...)"

Hannah Arendt, Vita Activa oder Vom taetigen Leben, Piper 3623, Taschenbuchsonderausgabe, Piper, Muenchen/ Zuerich, 2002, p.224

ドイツワインは辛口の夢を見るか?

「粗末なワインを飲むには、 人生はあまりに短い。」ゲーテ
"Das Leben ist zu kurz, um schlechten Wein zu trinken." Goethe

ドイツワイン会(詳細は随時追加)
ロゼ2種類、白5種類、スパークリング2種類、赤1種類の合計10本
おまけで、参加者の一人が持ってきてくれたアメリカの白ワイン

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料理

アボカド・蟹・トマトのトルトヒェン Toertchen mit Avocado, Krabben und Tomaten

参照レシピ
cookpad.com

ジャガイモのスープ デュッセルドルフ風 Kartoffelsuppe mit Speck

参照レシピ
野田浩資(2005)『新・ドイツの森の料理人』里文出版、p.19

タマネギのパイ シュヴァーベン風 Schwaebischer Zwiebelkuchen

参照レシピ
野田浩資(2005)『新・ドイツの森の料理人』里文出版、p.35

参照動画
www.youtube.com

激ウマ・キッシュのレシピ!生クリームと市販パイシートを使った本格キッシュの作り方【林裕人】 - YouTube
Schwäbischer Zwiebelkuchen - YouTube
Zwiebelkuchen #Rezept #chefkoch - YouTube

チーズのオードブル アルゴイ地方風 Obatzda

参照レシピ
野田浩資(2005)『新・ドイツの森の料理人』里文出版、p.44

豚肉のグラーシュ Gulasch

参照レシピ
cookpad.com

パンとチーズ

クロワッサン
バゲット
エメンタール
ミモレット 6ヶ月熟成

jucovia.jp

参考雑誌
『Winart』美術出版社、2009、No.53

ワイン

ドイツ

ドイツの白ワインは他国のそれとは大きく異なり、活き活きとして、フルーティで、ミネラリティ豊かな味わいを持っています。これらの個性は、特別な気候と土壌から生み出されるものです。……土壌や品種にバラエティがあり、ドイツワインは決して画一的ではありません。

www.winesofgermany.jp

地域

ファルツ

ドイツで購入されている国産ワインのうち3本に1本はファルツ産です。……ファルツ地方はドイツ国内において規模の上では最大の赤ワイン生産地でもあります。

www.winesofgermany.jp

醸造

ライヒスラート・フォン・ブール

この土地で、3本の指に数えられ、バッサーマン・ヨルダン、ビュルクリン・ヴォルフ とともに それぞれ頭文字がBではじまることから、「ファルツの3B」と称えられる醸造所、それがライヒスラート・フォン・ブールです。

ライヒスラート・フォン・ブール醸造所【ボンルパ】

天皇皇后のベルリン訪問の晩餐会や、エリザベス皇太后の100歳記念の晩餐会で供されたり、最近ではルフトハンザ航空のファーストクラス、ビジネスクラスでサービスされるなど国際的な評価も非常に高くなっています。

株式会社徳岡 - 「もの」商品開発力 - ワイン生産への関わり

ヘフトマン
Home - Weingut Hechtmann :: Alte Schulgasse :: 76831 Ilbesheim :: PFALZ

ここのワインの購入場所
www.german-wine.jp

ブドウ

リースリング

リースリングドイツワインを代表する品種であり、ドイツのワイン産業を支える主力品種です。

ドイツワイン | ワインを知る | ぶどう品種 | 白ぶどう品種

シュペートブルグンダー

白ワインにおいて、最高品質を誇る品種がリースリングなら、赤ワインにおいて、同じ地位を占めるのは、シュペートブルグンダー、つまりピノノワールでしょう。

シュヴァルツリースリング

フランスでは「ピノ・ムニエ」と呼ばれ、シャンパンに使用する3品種のうちの1つです。

ドイツワイン | ワインを知る | ぶどう品種 | 赤ぶどう品種

ワインリスト

ヘフトマン

ロゼ
 シュヴァルツリースリング ロゼ ファインヘルプ 2011
2017 Schwarzriesling Rosé feinherb - Vinothek Hechtmann

ライヒスラート・フォン・ブール

ロゼ
 シュペートブルグンダー ロゼ トロッケン 2008

 ヴァッヘンハイマー ルギンスラント リースリング シュペトレーゼ ハルプトロッケン 2004
 フォルスター ウンゲホイヤー リースリング シュペトレーゼ トロッケン 2004
 フォルスター ウンゲホイヤー リースリング シュペトレーゼ トロッケン 2001
 ダイデスハイマー ヘルゴッツアッカー リースリング シュペトレーゼ トロッケン 2003
 ルッパーツベルガ― リンゼンブッシュ リースリング シュペトレーゼ 2003
スパークリング
 ゼクト ブリュット 2007
 ゼクト ブリュット 2003

 シュペートブルグンダー トロッケン 2008

スペルバウンド

マイケルの息子でモンダヴィ家の4代目ワインメーカー、ロブが立ち上げたワイナリーです。

シャルドネ  2015

樽とステンレス・タンクで発酵。スタンレス・タンク、アメリカン・オーク、フレンチ・オークで熟成。
発酵と熟成に樽を使用することで、力強さや凝縮感、複雑性が生まれ、フレッシュ・ヴァニラやクレーム・ブリュレの ような風味が与えられます。活き活きとした酸を保つため、10%ほどステンレスタンクを使用します。

ジェロボーム株式会社 | スペルバウンド

wotopi.jp

alldependsonme.hatenablog.com

オーストリアワインと数の子

 メルシャンで面白い研究が行われていた。ワイン中の鉄と魚介料理の成分が反応して生臭みを鼻で感じることを、メルシャンの田村隆幸さんが解明したようだ。数の子をはじめとする魚卵とワインはしばしば相性が悪いと言われていたので、改めて考えなおす画期的な研究である。
 正月に飲んだオーストリアの白ワイン、ニコライホーフのフォン・シュタイン リースリング スマラクト2013と数の子の相性が悪くならなかったのは、そのワインの鉄含有量が低かったからなのだろう。

www.kirin.co.jp
www.jstage.jst.go.jp

 日本に入ってきているフォン・シュタイン リースリング スマラクトは2010年ものが現行ヴィンテージみたい。
 ニコライホーフを訪問したときにもらったパンフレットには「要デキャンタ」と書いてあった。それに気づいたのは飲んでしまったあとだが。もともと大樽で2年半寝かせてから出しているようだ。ちなみに値段は26,20ユーロだから日本円で3600円強(1ユーロ=140円として)。
 今回のワインは4年経って金の色合いが濃く出ており、芳醇な香りと滑らかな口当たりが快い飲み心地を生んでいた。普段ワインを飲まない人でもちょっと驚いてしまうくらい澄んだ味わいだった。味が薄いのではなく、雑味がまったくないのだ。
http://cave-online.suntory-service.co.jp/shopdetail/000000002351/cave-online.suntory-service.co.jp

 ヴァッハウの土壌はドナウ川が運んできた砂、砂利、黄土を含み、"gfohler"という片麻岩の一種もあるとのこと。

Soil types play an important role in Wachau vineyards. They are composed largely of sand, gravel and loess, carried downstream by the Danube over many millennia. Also present is a special kind of gneiss known as gfohler, which is said to bring a certain minerality to Wachau wines.

www.wine-searcher.com

 ヴァッハウの地質的に、鉄分は少ないのかな…?

Wachau
Old, crystalline consolidated rocks form the steep slopes of the Danube Valley with for instance, various gneisses, amphibolites, marbles and quartzites. First and foremost is the finely convoluted Gföhler Gneiss, followed by a variety, on the basis of composition and structure, of paragneiss and the hard granodiorite gneiss of Spitz. Basic rock layers in the form of dark amphibolites which originated as lavas from submarine volcanoes, often alternate with the paragneiss. Marbles with characteristic grey-white banding occur in the western Wachau area.

In the deeper part of the valley flank between Wösendorf and Weißenkirchen there is an old landslide mass of weathered and chaotic layered rock and boulders. The plane of motion is marked by kaolin and red loam. Small remnants of gravels, sands, silts and clays, such as at Spitzer Burgberg and near Weißenkirchen, belong to the Molasse Zone and formed from rivers and marine transgressions during the period between 30 and 15 million years ago.

Loess is often encountered in the Wachau area as a thin layer upon the older rocks. Coarse river gravels with a covering of fine flood sediments form the present valley floor of the Danube.

http://www.austrianwine.jp/unser-wein/klima-boden/mehr-als-urgestein-und-loess/geologie-der-weinbaugebiete/niederoesterreich/

担々麺食べたい

生きることは、自分が弱いと知ったときから始まる。その弱さが原因で死んでしまわないように気をつけてから。
愚痴を言うことはともすれば忌避されちしまいがち。だけど愚痴る方は「そう言ってもやらなければいけない」ことをとっくの昔に分かっている。
分かっちゃいるんだけど、嫌だ嫌だと言ってしまいたい。そう言って、周りから「はいはい、そうだね」と返されて、「まあ、そんなもんだよな」と思って今日も寝る。
自分が弱いんだってことを周りに認めてもらって、褒められも貶されもせず、事実を受けいるだけのこと。それだけのことが実はとても大事。
生きなきゃいけないのことを確かめる。どうしようもなくったって、死にたくて仕方がなくったって、なんだかんだ生きていく。
急に死んでしまったら色々と面倒だし迷惑をかけるし、死んでまでそんなことをしたくはない。とりあえず明日も起きて生きる。
「死にたい」とこぼして、「それな」と返される。なんの脈絡もなく「最近うまいラーメン屋できたよ。行く?」と言われて、「行く!」と答える。

なにはなくとも生きていくのだ
www.youtube.com

僕が思う明日へ まず僕が歩き出すんだ
www.youtube.com

カッコつけたワインベスト5

 バーンバーグのこの企画が面白かった。「好きな●●」を答えるだけなのに、そこについ見栄を潜ませてしまう。

www.e-aidem.com

原宿「それは、誰でも知ってるカイジより、もうちょっと詳しい感を演出したかったからです……」

ギャラクシー「『好きな漫画ベスト5』で、ドラゴンボールを入れるのは勇気がすごい。『誰でも知ってるだろ』とか『有名な漫画しか読んでないの?』って思われそう」

シモダ「誰でも知ってる作品を挙げると『そりゃそうだろ』で話が終わっちゃうっていうのはありますけどね」

 「●●通」を自負している人は、「好きな●●」を尋ねられたときに、“通ぶり”を発揮してしまう。●●を好きになるきっかけになったベーシックな経験があったはずなのに、“通ぶる”ためにベーシックなものをあえて避けてしまう。そういう心理はこの企画でも「これを好きだと言ったら普通すぎやしないか」という風に表れている。
 ベーシックとマニアックとの間にあるこの落とし穴には、「●●通」に尋ねる側も時としてはまってしまう。何から手をつけたらいいか知りたいのか(ベーシック)、それとも一般には知られていないことを知りたいのか(マニアック)によって、適当な尋ね方は異なってくる。

 さて、これにかこつけて、「カッコつけたワインベスト5」と「カッコつけてないワインベスト5」を書いてみる。

「カッコつけたワインベスト5」
1位アンリオ アンシャンテルール 1996
2位エゴン・ミュラー シャルツフホフベルガー 1990
3位ロバート・ヴァイル キードリッヒャー・グレーフェンベルク リースリング トロッケン GG 2014
4位ドメーヌ・アルヌ・ラショー ヴォーヌ・ロマネ オート・ド・メズィエール 2009
5位マルセル・ダイス シュネン・ブルク グラン・クリュ 2008

「カッコつけてないワインベスト5」
1位クロスター・エーバー・バッハ シュタインベルガー カビネット
2位ロバート・ヴァイル リースリング トロッケン
3位アンリオ ブリュット・スーヴェラン
4位サッポログランポレール 北海道ケルナー辛口
5位ドメーヌ・ヴァインバック リースリング キュベ・テオ

 こうして書いてみると、上は「語って聞かせたいワインベスト5」で、下は「試しに飲んでもらいたいワインベスト5」って感じがする。他の人におすすめを尋ねるときの、尋ね方のヒントになりそうだ。

「福祉の政治過程」の意味と修論アウトライン Ver. 06.19

 私の研究テーマは「福祉の政治過程の日独比較:国家干渉および私的自治の観点から」である。この「福祉の政治過程」の意味を、これまで私は明確にしてこなかった。今回は私が「福祉の政治過程」をいかなる意味で用いようとしているかについて記す。

 また、後段では先日公開した修論のアウトラインに暫定的な参考文献リストを付したものを記す。参考文献は今のところダウンロードした論文が多い。留学中で日本語書籍の入手が容易でない(とくに古書)ためである。今回参考文献を付したのはドイツに関するものが中心である。というのも、私はこの留学中に修論のドイツに関する部分をあらかた書き上げる予定でいるからだ。これまでのアウトラインは12月25日の〆切を見据えたものであった。今回の分はドイツ部分の完成目安としている7月31日を見据えたものである。

 

 

2017620

福祉の政治過程

 

 福祉を個人の人権として保障することは、必然的に個人の自由を保障することも含意している。福祉国家が問われているのはつねに、この個人の福祉の保障と個人の自由の保障とのバランスである。これらは相互依存関係にあると同時にディレンマの関係にもある。この関係は言い換えるならば、国家干渉と私的自治との拮抗関係である。個人の福祉を保障するには、個人の生活状況を脅かしている要因を取り除く必要がある。それを大規模に実施するのが国家干渉である。ただし、国家干渉の合法性と正当性は個人の権利行使の下にある。個人の自由を保障するには、公権力の不当な干渉を排除する必要がある。それを可能にするのが、言論、集会・結社、内心の自由である。これまた注意しなければならないのは、国家干渉と私的自治との拮抗関係と言った場合、あくまでその主導権は私的自治の方にあるという点である。つまり、公権力が私的自治の範囲を定めるのではなく、私的自治の方が国家干渉の範囲を定めるということである。公権力が、個人の福祉の保障を私的自治に転嫁することは本末転倒である。公権力はただ、私的自治に出来ないことに限ってその干渉を許されているに過ぎない。国家干渉と私的自治との拮抗関係とは、私的自治には何が出来て公権力は何をすべきかを見極める不断の取り組みのことである。

 「福祉の政治過程に関する日独比較」は次のことを明らかにする。まず、ドイツではなぜ、いかにして福祉が権利と認められるようになったかについて。次に、日本ではなぜ、いかにして福祉が権利として認められるに至らなかったかについて。日本は明治以降にドイツからさまざまな思想や制度を取り入れたにも関わらず、ドイツと同様の過程を経ることはなかった。その経緯を明らかにするには次の問いに答える必要がある。第一に、ドイツからもたらされた思想や制度はどのようなものであったか。第二に、ドイツからの影響は日本でどのような結果をもたらしたのか。そして第三に、何がドイツと日本との間に思想および制度上の違いをもたらしたか。以上の三つにこたえることで、日独の福祉の政治過程の差異が明らかとなる。結論を先取りすれば、第一にドイツでは個人の自由と福祉の保障に限って国家干渉を認められるようになった。第二に、日本では社会秩序の維持ないし醸成のために国家干渉が行われてきた。そして、ドイツと日本とでは近代化を促した内在的要因、外在的状況、時期が異なることが、両国の福祉の政治過程に決定的な違いをもたらしたのである。

 

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 修論アウトライン 

「福祉の政治過程に関する日独比較:国家干渉および私的自治の観点から」

2017年6月19日 

高階英樹(人文社会科学研究科公共研究専攻) 

1.   研究の対象、手法 

A.      問い(研究の対象)

       i.     いかにして日本で福祉国家が形成されたか

B.      答え(研究の目的)

       i.     強い国家干渉と弱い私的自治が相まって形成された

C.  論拠(研究の手法)

       i.     明治期以降の日本に影響を与えたドイツの福祉政治過程との対比から明らかとなる

2. 検討する概念の整理

A.  福祉Wohlfahrt

翻訳 福祉の概念史(1)

福祉の概念史Ⅱ[翻訳]

翻訳 福祉の概念史(3)

 

B.  公共の福祉Gemeinwohl

木村周市朗  法治国家と「公共の福祉」 : ドイツ法治国家思想の歴史的射程

C.  ポリツァイPolizei

吉田耕太郎  ドイツ民衆啓蒙思想の社会的意義--官房学そしてザクセンの復興を支えた知的枠組を例に

吉田耕太郎  善き秩序--ポリツァイ概念史研究の可能性と課題-

松本尚子   ホイマン『ドイツ・ポリツァイ法事始』と近世末期の諸国家学(1):ドイツ近代行政法学史への序論として

松本尚子   ホイマン『ドイツ・ポリツァイ法事始』と近世末期の諸国家学(2):ドイツ近代行政法学史への序論として

松本尚子   ホイマン『ドイツ・ポリツァイ法事始』と近世末期の諸国家学(3):ドイツ近代行政法学史への序論として

松本尚子   ホイマン『ドイツ・ポリツァイ法事始』と近世末期の諸国家学(4):ドイツ近代行政法学史への序論として

 

D.  社会政策Sozialpolitik Social reform

大陽寺順一  社会政策の主体と総資本の立場

大陽寺順一  西ドイツ社会政策論の岐路

大陽寺順一  社会政策論における原理論と国家論

高田一夫   社会政策の長期動的理論 : 山田教授の社会政策正統性理論に関説して

臼井英之   社会政策論における社会的観点 : 現代ドイツ社会政策論の一断面

三苫利幸   大河内一男『独逸社会政策思想史』とヴェーバーの位置

臼井英之   ハインツ・ランペルト著 ドイツ社会政策史(I)

臼井英之   ハインツ・ランペルト著 ドイツ社会政策史(2)

ライプリード, シュテファン 布川, 日佐史 ヨーロッパ社会国家 : ヨーロッパ貧困政策体系の統合の展望

金子良事 日本における「社会政策」概念について : 社会政策研究と社会福祉研究との対話の試み

 

 

E.  福祉国家Wohlfahrtsstaat Welfare state

木村周市朗  ドイツ社会保障概念の形成と社会政策

宮崎文彦   「行政国家」から考える公共性論

島健司   歴史の長い影 : ビスマルク福祉国家改革と政治過程

F.  法治国家Rechtsstaat

高田敏     シュタールにおける法治国の概念

広沢民生   民主的な「社会的法治国家」への途--ヘルマン・ヘラーの「社会的法治国家」について

大野達司   <論説>ワイマール期国法学における方法と主体の問題 (1) : ヘルマン・ヘラーの議論を中心にして

大野達司   <論説>ワイマール期国法学における方法と主体の問題 (2) : ヘルマン・ヘラーの議論を中心にして

大野達司   <論説>ワイマール期国法学における方法と主体の問題 (3) : ヘルマン・ヘラーの議論を中心にして

大野達司   <論説>ワイマール期国法学における方法と主体の問題 (4) : ヘルマン・ヘラーの議論を中心にして

G.  社会国家Sozialstaat

木村周市朗  福祉国家と社会国家 : 西ドイツにおける両概念の史的連関構造をめぐって

木村周市朗  近・現代的干渉主義の成立 : ドイツ福祉国家思想史の一視点

木村周市朗  ドイツ福祉国家思想史

石塚壮太郎  国家目標規定と国家学 : その基本権制約ドグマーティクへの照射

石塚壮太郎  社会国家・社会国家原理・社会法 : 国家目標規定の規範的具体化の一局面

石塚壮太郎  「生存権」の法的性質 : 主観的権利としての成立とその意義

 

3. ドイツ社会政策史

A.  旧福祉国家(ポリツァイ国家)

成瀬治     ルターと国家権力

成瀬治     Landständishe Verfassung考 (上) : 身分制の歴史理論的把握のために

成瀬治     Landstandische Verfassung考(中)--身分制の歴史理論的把握のために

成瀬治     ジャン=ボダンにおける「国家」と「家」

成瀬治     近代市民社会の成立 : 社会思想史的考察

成瀬治     初期近代における「公」と「私」

成瀬治     絶対主義国家と身分制社会

B.  カントによる旧福祉国家批判

       i.     「幸福主義」批判

木村周市朗  カントの旧福祉国家批判について

木村周市朗  質料倫理問題としての生活課題 : 「カント後」問題とヘーゲル

大竹信行   ヘーゲル法哲学』におけるポリツァイについて--福祉行政・社会政策論の論理的性格と理論的基盤

大竹信行   カント法論における「福祉」

大竹信行   プロイセン行政とヘーゲルの福祉思想

大竹信行   カントの家族法理論 : プロイセンの家族変容と『人倫の形而上学

 

C.  ポリツァイ学の変容

       i.     「福祉」を除外して「安全」に限定

D.  法治国家論の興隆

       i.     自然法の否定と実証法学

      ii.     国家目的と法との分離

E.  「社会問題」の発生と深刻化

       i.     農民解放

      ii.     初期自由主義

    iii.     パウペリスムス

成瀬治     初期自由主義と「身分制国家」 : ヴュルテムベルク憲法の成立をめぐって

木村周市朗  バーデン初期自由主義とフランツ・ヨーゼフ・ブス

木村周市朗  ドイツ法治国家思想の形成 : 市民的自由と国家干渉(一)

木村周市朗  絶対主義末期の干渉主義批判の一類型 : 市民的自由と国家干渉(二)

東畑隆介   F・V・シュタインの「都市条例」について

東畑隆介   プロイセン農民解放の理念について

東畑隆介   ハルデンベルクと「国民代表制」の問題について

東畑隆介   シュタイン市制の成立と展開

大野達司 山本洋子 <翻訳>オットー・フォン・ギールケ「シュタインの都市条令」

 

F.  社会政策論の登場と発展

       i.     ローベルト・フォン・モール

木村周市朗  カント・改革時代・モール(上)  ドイツ干渉国家と法治国家思想

木村周市朗  カント・改革時代・モール(下) : ドイツ干渉国家と法治国家思想

      ii.     ローレンツ・フォン・シュタイン

滝井一博   ロレンツ・フォン・シュタインにおけるドイツ国家学の形成-1

滝井一博   ロレンツ・フォン・シュタインにおけるドイツ国家学の形成-2完

木村周市朗  シュタイン行政国家論の成立

柴田隆行   前期シュタインの社会思想研究(1)ギゾー

柴田隆行   前期シュタインの社会思想研究(2)アリストテレス

柴田隆行   前期シュタインの社会思想研究(3)ルソー       

柴田隆行   前期シュタインの社会思想研究(4)アダム・スミス

柴田隆行   前期シュタインの社会思想研究(5)カント、フィヒテヘーゲル

柴田隆行   前期シュタインの国家学における国際関係理論と自治理論

柴田隆行   ローレンツ・フォン・シュタインの自治理論

柴田隆行   ウィーン大学におけるシュタイン講義

柴田隆行   ローレンツ・フォン・シュタインの自治理論の学説史上の位置

柴田隆行   シュレスヴィヒ・ホルシュタインの歴史から考えるローレンツ・フォン・シュタインの〈国家・社会・自治〉

柴田隆行   ローレンツ・フォン・シュタインの自治団体論

柴田隆行   シュタインとグナイストの交流 : 往復書簡を通して(上)

柴田隆行   シュタインとグナイストの交流 : 往復書簡を通して(下)

柴田隆行   自治をめぐるグナイストとシュタインの理論上の差異

柴田隆行   ローレンツ・フォン・シュタインの教養形成論

    iii.     アドルフ・ヴァーグナー

木村周市朗  ドイツ国家学と経済学 : カール・ハインリヒ・ラウの「官房学の再編成」を中心に

 

G.  国家干渉の正当化

       i.     ビスマルク国家社会主義政策

一條和生   社会改良と社会民主主義 : ドイツ第二帝制期の社会改良協会

屋敷二郎   フリードリヒ大王の法観念 : 私法の倫理性と法曹の社会的使命

福澤直樹   ドイツ第二帝政ライヒ保険法の成立過程とその社会政策的意義 : ライヒ政府と産業界との相剋を中心に

福澤直樹   ドイツにおける社会国家の途 : 第二帝政期から現代に至るまでの歴史的経験

木村周市朗  社会民主主義と自治体政策 : フーゴリンデマンゲマインデ行政改革

 

      ii.     ケッテラー司教による演説

木村周市朗  19世紀中葉ドイツ・カトリック社会運動についての覚書 : ケッテラー社会政策思想研究のために

木村周市朗  ラッサールとケッテラー : 十九世紀ドイツ・カトリック社会経済思想史の一側面

木村周市朗  ケッテラー社会経済理論における「自治」と国家

    iii.     エルバーフェルド制度

      iv.     シュトラスブルク制度

H.  第一次世界大戦

       i.     総力戦体制

北村陽子 近代ドイツにおける戦時女性動員と社会活動の形成

山田高生   第一次大戦中のドイツの国家社会政策(一) : ヴィルヘルム・グレーナーと戦時社会政策

山田高生   第一次大戦中のドイツの国家社会政策(二) : ヴィルヘルム・グレーナーと戦時社会政策

山田高生   第一次大戦中のドイツの国家社会政策(三) : ヴィルヘルム・グレーナーと戦時社会政策

山田高生   第一次大戦中のドイツの国家社会政策(四) : ヴィルヘルム・グレーナーと戦時社会政策

山田高生   第一次大戦中のドイツの国家社会政策(五) : ヴィルヘルム・グレーナーと戦時社会政策

山田高生   第一次大戦中のドイツの国家社会政策(六) : ヴィルヘルム・グレーナーと戦時社会政策

山田高生   第一次大戦中のドイツの国家社会政策(七・完) : ヴィルヘルム・グレーナーと戦時社会政策

 

I.  ヴァイマール共和国

       i.     自由主義と「家族の危機」

      ii.     家族保護ワーカー

山田高生   ヴァイマル経済民主主義の成立前史 : 第一次大戦前における思想的先駆と自由労働組合の社会政策

山田高生   ヴァイマル経済民主主義にかんする一考察

島健司   ワイマ-ル体制と議会 (政治過程と議会の機能) -- (欧米の議会)

高橋彦博   憲法議会における「ワイマール・モデル」 : 生存権規定の挿入

木下秀雄   ワイマ-ルにおける公的扶助法の展開-1

木下秀雄   ワイマ-ルにおける公的扶助法の展開-2完

中野智世   家族扶助制度の成立とその理念 : ヴァイマル共和国期の公的扶助

中野智世   「民衆の母」 : ヴァイマル・ドイツにおける家族保護ワーカー

中野智世   第一次世界大戦後ドイツにおける民間社会事業 : 福祉国家との共存をめぐって

中野智世   福祉の現場における家族:—1920~1930年代ドイツにおける家族保護ワーカーの活動から—

北村陽子   第二帝政期ドイツにおける「母性保険」構想の発展と限界

森宜人     「社会国家」の形成と都市社会政策の展開 : ワイマール体制成立前後のハンブルクにおける失業扶助を事例に

雨宮昭彦   1920年代ドイツにおける経済構造の変化とその限界

雨宮昭彦   両大戦間期ドイツにおける経済秩序・経済政策思想の革新 (2)

雨宮昭彦   両大戦間期ドイツにおける経済秩序・経済政策思想の革新 (3)

雨宮昭彦   1930年代ドイツにおける「リベラルな国家干渉」論の展開 (1)

雨宮昭彦   1930年代ドイツにおける「リベラルな国家干渉」論の展開 (2)

雨宮昭彦   1930年代ドイツにおける「リベラルな国家干渉」論の展開(3)

雨宮昭彦   両大戦間期ドイツにおける経済秩序・経済政策思想の革新 (4)

 

J.  第二次世界大戦

       i.     ナチスによる統制

K.  社会的法治国家

       i.     福祉国家の否定

      ii.     オルドリベラリスムス

黒川洋行 ドイツの社会的市場経済と社会国家概念

    iii.     社会政策と総合社会政策

大陽寺順一  総合社会政策論の再構成への一試論

木村周市朗  西ドイツ・カトリック社会保障改革論と歴史認識

大陽寺順一  社会政策論の広義化とその背景 : 西ドイツ社会国家論を手がかりとして

豊島明子   ドイツ連邦社会扶助法における行政の責任(1) : 私的福祉事業との協働関係規定を素材として

豊島明子   ドイツ連邦社会扶助法における行政の責任(2)完 : 私的福祉事業との協動関係規定を素材として

豊島明子   ドイツ連邦社会扶助法における公と私の協働の法構造(一) : 一九八四年改正法までを素材として

豊島明子   ドイツ連邦社会扶助法における公と私の協動の法構造(二)・完 : 一九八四年改正法までを素材として

森周子     西ドイツ・一九五七年 年金改革の考察 : 思想的背景

永合位行   介護保障と社会的秩序政策

永合位行   年金保障と社会的秩序政策

永合位行   ドイツにおける第三セクターの展開