2016年9月から留学中に読んだ本+デュッセルドルフ大学の図書事情

 本棚を見れば、その人がどんな人か分かると巷で言われている。ひょっとしたら本人よりも本棚の方が、その人のことを雄弁に語りうるかもしれない。最近ならOne NoteやEvernoteもその役割を果たせるだろう。
 この記事では私が留学中に読んだ本を以下に一覧にして記す。本と結びつけられて、その当時のことが思い出される。留学している間に、私が何を知りたいと思い、どのような本を選んだか。帰国まで残り3か月となったいま、それらを記しておくことは振り返りにもなるし思い出の確認にもなる。
 なお、読んだ本のなかには私が留学しているデュッセルドルフ大学の図書館から借りたものも多く含まれている。海外の大学の図書事情に関する情報はおそらく多くないと思われるので、参考のため図書館から借りた本についてはそのことを明記しておく。
 大学図書館から借りた本はULB(Universität- und Landesbibliothek)と記し、大学の専門図書館から借りた本はVBG(Verbund- und Fachbibliothek Geisteswissenschaften)と記す。

2016年9月1日

 2014年に指導教官からいただいた本。ドイツ留学ということで携行した。

9月25日

中級ドイツ語のしくみ

中級ドイツ語のしくみ

 ドイツ南西部、フライブルクにある語学機関ゲーテインスティテュートの図書館から借りて読んだ。のちに個人的にアマゾンで買う。
 アマゾンJPで本3冊を注文してドイツまで送ってきてもらっても1000円ほど余分に払っただけだった。ドイツで売られている日本の本が倍の値段であることを考えると、それほど高くはない。一週間ほどで届く。

10月16日
amzn.to
 留学前にもらった記念の本。

10月25日

活動的生

活動的生

 日本から携行した本の一冊。2015年8月に初めてドイツを訪れ、フランクフルト中央駅の本屋でHannah ArendtのVita Activaを買ったのはいい思い出。ドイツ語の勉強を始めた理由の一つが、アレントハイデッガーの本を原書で読むことだった。

11月3日

日本の政治と言葉 ― 上 「自由」と「福祉」

日本の政治と言葉 ― 上 「自由」と「福祉」

 ULBから。ドルトムントに行く電車のなかで読んだ覚えがある。

11月10日

占領期の福祉政策

占領期の福祉政策

 ULBから。この本は帰国したら自分用に買いたい。

11月13日

非婚ですが、それが何か! ? 結婚リスク時代を生きる

非婚ですが、それが何か! ? 結婚リスク時代を生きる

 ULBから。この本は現代日本研究科修士課程のゼミで課題図書だった。日本語母語者が自分一人だけだったのでレジュメを担当した。対談本だったのでまとめるのがとても大変だった。レジュメのドイツ語訳は友人に手伝ってもらった。

日本の政治と言葉〈下〉「平和」と「国家」

日本の政治と言葉〈下〉「平和」と「国家」

 ULBから。この上下二冊を読んで、石田雄の『明治思想史研究』をのちに購入。日本へ一時帰国したさいにドイツへ持って帰った。

11月17日

フェミニズムの政治学―― ケアの倫理をグローバル社会へ

フェミニズムの政治学―― ケアの倫理をグローバル社会へ

 ULBから。ジェンダーフェミニズムの本は図書館に豊富にある。

11月27日

 VFGから。上記レジュメを作成するさいの参考にした。

戦後日本の女性政策

戦後日本の女性政策

 VFGから。大変勉強になる本で、著者が若くして亡くなられたことはかえすがえす残念である。

12月3日

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)

 VFGから。吉本ばななのほか、綿矢りさ村上春樹といった現代作家の本がある。夏目漱石森鴎外の全集もそろっている。

 VFGから。共著者の前みちこ氏はかつての東アジア研究科を現代日本研究科に改組する指揮をとられた方である。

12月10日

ハネムーン (中公文庫)

ハネムーン (中公文庫)

 VFGから。読んで気に入ったので、『宇宙のみなしご』を贈ってくれた相手へのお返しに選んだ。

12月16日

 VFGから。このころ日本語に飢えていたというか、物語を読みたかったので小説をよく借りている。

12月17日

キッチン (角川文庫)

キッチン (角川文庫)

 VFGから。これに限らず吉本ばななの本はドイツでも翻訳されている。

12月18日

現代政治と女性政策 (双書ジェンダー分析)

現代政治と女性政策 (双書ジェンダー分析)

 VFGから。日本語だけで発表するゼミで修士論文について報告する予定があったので、その準備のために借りた。これも自分用に買いたい。

2017年1月8日

 シギサワカヤの漫画はすべて買っている。一時帰国したさいに念願の購入。待ち遠しかった。

1月10日

 この本が出てからTwitter政治学クラスタの反響がすごかった。
 そういえば11月のトランプ当選はドイツでも衝撃が大きかった。アイルランド出身の英語の先生は、Brexitのとき同様朝起きたら世界が一変したかと思ったと言っていた。

1月11日

 イギリスでいったい何が起きているか知るのにうってつけの本だった。

1月13日

 ドイツに来るまでキリスト教にはまったく関心がなかった。とはいえ、やはりヨーロッパを理解するのにキリスト教は欠かせない。これを鵜呑みにすることは危険だが、理解のとっかかりとして。

1月15日

ドイツの歴史を知るための50章 (エリア・スタディーズ151)

ドイツの歴史を知るための50章 (エリア・スタディーズ151)

 留学するまでドイツの専門ではなかったので歴史のことがいまいち分からなかった。コンパクトに一覧できるものがあるとありがたい。

1月16日

社会福祉理念の研究―史的政策分析による21世紀タイプの究明

社会福祉理念の研究―史的政策分析による21世紀タイプの究明

 おそらく研究界隈で全然注目されていないと思われるが、個人的にはかなり重要なことが書かれていた。ただし、主張の裏どりをする必要がありそうなので、帰国後にその作業にとりかかる。

1月17日

日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)

日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)

 日本政治を理解するうえで繰り返し読む必要があると思われる一冊。

2月5日

 福祉国家研究の重要文献。このシリーズ、素晴らしい内容ばかりなのに値が張るのと絶版が多いのが悲しい。

2月21日

 VFGから。小田原市の「生活保護ジャンパー」事件は福祉研究者として衝撃が大きかった。その後市民団体との協力によって事態は改善に向かっているようだが。

2月22日

日本型福祉国家の形成と「十五年戦争」 (MINERVA社会福祉叢書)

日本型福祉国家の形成と「十五年戦争」 (MINERVA社会福祉叢書)

 戦争と福祉は一見水と油のようだが、実際のところなかなかどうして密接な関係にある。

反転する福祉国家――オランダモデルの光と影

反転する福祉国家――オランダモデルの光と影

 寛容なはずの福祉国家で、なぜ移民排斥が高まっているのかは現在もっとも注目されているテーマの一つと言っても過言ではない。

2月23日

現代ドイツ福祉国家の政治経済学 (シリーズ・現代の福祉国家)

現代ドイツ福祉国家の政治経済学 (シリーズ・現代の福祉国家)

 戦後ドイツの政治を理解するうえで大変参考になった。

3月14日

 浅井ラボの本は角川時代からすべて持っている。今回は初めて電子書籍で購入。もちろん文庫版も買う。

5月6日

福祉政治史: 格差に抗するデモクラシー

福祉政治史: 格差に抗するデモクラシー

 今後必ず言及されるであろう福祉政治研究の最重要文献。
 日本からドイツに来てくれた人にお願いして持ってきてもらった。

5月7日

自分のなかに歴史をよむ (ちくま文庫)

自分のなかに歴史をよむ (ちくま文庫)

 歴史研究の入門としてよく読まれている本。実は阿部謹也全集がVFGにあって、これも読むことができた。

5月8日

勉強の哲学 来たるべきバカのために

勉強の哲学 来たるべきバカのために

 現物を注文したあとに電子書籍版が出てタイミングの悪さに歯噛みしたが、それはされておき、読まれるべき本だと思う。日本からの留学生には大学3年生が多いので彼らに紹介してみるのもいい。

5月13日

近代ドイツの母性主義フェミニズム

近代ドイツの母性主義フェミニズム

 VFGから。ドイツ語によるゼミで、主婦と母性について報告するため参考文献とした。岡田英己子氏の最新の研究とあわせて読むと「母性」を相対化して捉えられる。

5月15日

近代を生きる女たち―十九世紀ドイツ社会史を読む

近代を生きる女たち―十九世紀ドイツ社会史を読む

 VFGから。これも同様の理由から。今とは比べ物にならないほど労働者は貧しく、不衛生なところに住まい、非道な扱いにさらされていたことが分かる。

5月21日

戦略としての家族―近代日本の国民国家形成と女性

戦略としての家族―近代日本の国民国家形成と女性

 VFGから。かなり興味深く読んだ。あとがきに書かれていることはとりわけ示唆に富んでいる。

6月3日

ポリティクス・イン・タイム―歴史・制度・社会分析 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 5)

ポリティクス・イン・タイム―歴史・制度・社会分析 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス 5)

 原書の発売から10年ちょっとしか過ぎていないにも関わらず、その内容からすでに古典と目されている政治学の重要な本。これが翻訳されたことが大変ありがたい。

 以上40冊弱が、これまで私が読んできた本である。この他にも買ったまま、借りたまま読んでいない本もある。
 また、論文や書籍の電子化が進んでいるので日本のCiniiやJ-Stageデュッセルドルフ大学の図書館サイトから膨大な研究にアクセスできる。4月1日から一時的にCiniiの機能が一部利用できなくなったときには大いに困った。その後、以前のようにダウンロードできるようになったが、現在でも『社会政策』や『社会福祉学』といった学会誌は、かつてのように利用できなくなっている。
 私はもっぱら日本語の論文を機関リポジトリから入手している。これらは査読がない紀要論文であり玉石混交なので、研究者の間では評判がよくない。私はほかの研究者が言及ないし引用した論文をダウンロードするとともに、その著者のほかの論文を芋づる式に保存している。事前の査読によって修正を受けることがなくとも、事後にほかの研究者によって評価を受けたものなら利用する意義は少なくない。
 今後新たに読んだ本については、折をみてまとめて更新したい。